研究ノート

2011〜2016年の動員数から考える、クラシックコンサートのこれから

Text by 明日梨(@s2azurin

世界最大の動画共有サービス「Youtube」が登場して10年余り。無料かつ気軽に音楽を聴けるようになったことで、音楽が売れなくなったと言われていますね。

拡大するインターネットの影響により、音楽業界は衰退していくしかないのでしょうか?

諦めるのはまだ早い、と私は思います。

 

たしかにCDなど音楽ソフトの売り上げは落ち込む一方であり、iTunesなどの有料配信サービスも伸び悩んでいます。

しかし一方で、ライブ・エンタテインメント調査委員会の調べによると、2016年のポップスのコンサート動員数は5年前と比較して約1.7倍、市場規模は約2.2倍に成長している現状もあります。

 

では、クラシック音楽のコンサートはどうでしょうか?

コンサートの動員数

こちらは、2011年から2016年に国内で開催されたコンサートのうち、ポップスとクラシックの動員数です。

図1:国内コンサートの動員数(『2017ライブ・エンタテインメント白書』より作成)

対象範囲:日本国内で開催される各種ライブ・エンタテインメントのうち、一般に開催情報の告知を行い、かつ一般にチケット販売を行う、有料の音楽・ステージ2ジャンルのイベント。

 

グラフの通りポップスのコンサート動員数は増加している傾向にあり、5年前と比較して1,454万人増約1.7倍となっています。

一方クラシックコンサートは、150万人増約1.3倍・・・
伸びてはいるものの、その差は僅かですね。

コンサートの市場規模

次に、こちらは2011年から2016年に国内で開催されたコンサートの市場規模です。

図2:国内コンサートの市場規模(『2017ライブ・エンタテインメント白書』より作成)

 

ポップスのコンサートは動員数の増加に伴い市場規模も大きくなっており、5年前と比較して1,610億円増約2.2倍もの規模になっています。

一方クラシックコンサートは、77億円増約1.3倍という、動員数と同じくらいの成長度合い。

 

音楽業界全体として音楽ソフトの売り上げは減っているものの、このようにポップスではコンサートの動員数、市場規模がともに成長している傾向にあります。

※大規模会場の改修が重なったことなどにより、2015年から2016年にかけてはやや縮小。

国内プロオーケストラとクラシック全体の市場規模

ちなみにクラシック音楽のコンサートといっても、国内オーケストラ、海外オーケストラ、ソロリサイタルなどといったいろいろな種類がありますよね。

そこで、日本オーケストラ連盟に加盟している正会員25団体の国内プロオーケストラと、クラシック全体(国内プロオーケストラを含む)を比較してみたいと思います。

図4:国内クラシックコンサートの市場規模(『2017ライブ・エンタテインメント白書』、『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑』2012〜2017より作成)

 

2011年時点ではクラシックの半分以上を占めていた国内プロオーケストラですが、横ばいが続いており、次第にその他のクラシックコンサートから引き離されていますね・・・頑張ってほしいところです。

その要因や、クラシック全体の内訳がどうなっているのかなども今後探っていけたらと思います。

リアルな体験が重視される時代へ

インターネットの台頭により、家の中で楽しめるエンタメが増えてきました。

しかし一方で、誰でも簡単に情報を手に入れられるからこそ、自分がその場に行くことでしか得られないリアルな体験を求める傾向が近年は強くなってきているように思います。

 

また、テレビなどのマスメディアから一方的に情報を受け取っていた時代から、SNSなどを使って個人が情報を発信できる時代になりました。

同じように、アーティストから聴衆への一方通行な鑑賞型から、双方向のコミュニケーションができる参加型が人気となってきていることで、参加型の公演が増えているポップスのコンサート市場は成長していると考えられます。

ただ演奏を聴いてもらうだけでなく、コンサートという場でどんな体験を与えることができるか追究し、観客を「巻き込む」ことができれば、クラシック音楽のコンサートも盛り上がっていく可能性があるのではないでしょうか。

クラシックコンサートの伸びしろ

ポップスのコンサートは、チケットが欲しくても手に入らないくらい人気の公演も多いものの、ライブ会場不足の問題により公演数に上限があることで近年は市場が飽和してきていることも考えられます。

しかし、残念ながらホールが満席になることの少ないクラシック音楽のコンサートは、その空席を埋めていくことでまだまだ伸びしろが大きいと思うのです。

 

来場時の満足度を上げてリピーターを獲得しつつ、SNSなどでのシェアがしやすい仕組みを作って新しいファン層を広げられるような工夫もしていきたいですね。

それでは♪

参考資料

📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2012』(2013、pp.130-131)
📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2013』(2014、pp.132-133)
📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2014』(2015、pp.132-133)
📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2015』(2016、pp.132-133)
📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2016』(2017、pp.138-139)
📖 日本オーケストラ連盟『日本のプロフェッショナル・オーケストラ年鑑2017』(2018、pp.142-143)

📖 ライブ・エンタテインメント調査委員会『2017ライブ・エンタテインメント白書』(ぴあ、2017、pp.16-19)

🌐 一般社団法人日本レコード協会 統計情報(生産実績・音楽配信売上実績)

ABOUT ME
明日梨 / Azuri
asunone編集長。大学で芸術工学を専攻し、文化施設と共同でアートマネジメント企画実践に取り組む。2018年に都内のIT企業へ新卒入社後、コンサルタントを経て広報へ。Web制作やイベント企画など、多方面へ活動を広げている。